第1層 · 品種breed
和牛とは何か
日本でいう「和牛」は、日本在来の肉用4品種を指す言葉です。品種についての言葉であって、産地や銘柄、格付については何も語っていません。
4つの品種
| 品種(英語名は暫定) | 成り立ち(書の記述による) | 特徴 |
|---|---|---|
| 黒毛和種Japanese Black | 中国・近畿地方の役肉用牛がもとで、のちに一部の外国種も交配された。[Handbook 2021] [Yamamoto 2017] | 日本の肉用牛の9割以上を占める。サシが入りやすく、きめが細かく、クリーム色でやや粘りのある脂をもつ。[Handbook 2021] [Yamamoto 2017] |
| 褐毛和種Japanese Brown | 系統は二つある。熊本系はデボン種、1907年以降はシンメンタール種の雄と交配された。高知系は韓牛の影響が強い。[Handbook 2021] | 放牧に向き、粗飼料でよく育つ。赤身とサシのバランスがよい。[Yamamoto 2017] |
| 日本短角種Japanese Shorthorn | 岩手の南部牛に、1871年ころ導入されたショートホーン種を交配した。品種として固定したのは1957年で、4品種の中で最も若い。[Handbook 2021] | 筋肉質の赤身で、主に東北と北海道で飼われ、放牧されることも多い。ドライエイジングによる味の変化が大きい。[Yamamoto 2017] |
| 無角和種Japanese Polled | 山口の在来牛に、1920年からアバディーン・アンガス種を交配した。1944年に品種として認められた。[Handbook 2021] | 角がなく成長も早いが、サシが入りにくい。現在は希少。[Handbook 2021] [Yamamoto 2017] |
日本の肉用牛の9割以上が黒毛和種で、ほかの3品種は合わせても2%に届きません。「和牛」と言うとき、ほとんどの場合は黒毛和種のことです。[Yamamoto 2017]
国産牛domestic beefは和牛ではない
日本の精肉売り場で「国産牛」と表示されている肉の多くは、乳用種のホルスタインか、ホルスタインの雌に黒毛和種を交配した交雑種(F1)です。日本で育ってはいますが、和牛ではありません。[Yamamoto 2017]
銘柄の名鑑を見ても同じことがわかります。黒毛和種の銘柄と並んで、交雑種やホルスタインの銘柄が数多く載っています。[Handbook 2021]
海外の「Wagyu」
黒毛和種は日本の外でも飼われています。マーク・シャツカーは、米ワシントン州の島で草だけで育てられた純血の黒毛和牛の群れを紹介しています。そのリブステーキは、彼にとってUSDAプライム以上の味でした。[Schatzker]
他の国が「Wagyu」をどう定義し、どう表示しているかは、4冊のどれも扱っていません。この図鑑でもその空白は埋めません。
牛肉の味を決めるもの
山本謙治は、牛肉の味わいを「品種×エサ×育て方」とまとめています。そこにどんな熟成を施すかが加わります。[Yamamoto 2017]
- エサ:濃厚飼料(穀物)はサシを入れる原動力になり、粗飼料(牧草)は赤身の肉になりやすい。βカロテンの多い牧草は、脂を黄色みがからせる。[Yamamoto 2017]
- 育て方:日本の牛は、ほとんどの期間を牛舎で過ごす。日本短角種や褐毛和種は、夏は山で放牧し冬は牛舎で飼う「夏山冬里」で育てられることも多い。[Yamamoto 2017]
- 時間:和牛は25〜30カ月齢での出荷が中心で、黒毛和種には40カ月齢を超えるものもある。山本は、約20カ月齢の米国のフィードロットや、年齢を重ねた雌牛を評価するフランスと対比している。[Yamamoto 2017]
次のページ血統:但馬牛 →