フィールドノート
よくある誤解と、その代わりの事実
誤解は事実よりも覚えやすいものです。そこで誤解の一つひとつに、それに代わる事実を並べました。
和牛はビールを飲み、日本酒でマッサージされ、クラシック音楽を聴いて育つ。
シャツカーは確かめに松阪まで行きました。その農家がビールを与えていたのは夏だけで、それも食欲のために1頭に1日1本の安いビールでした。ブラッシングは品評会のときだけで、日本酒の噴霧は毛づやを出すための昔のやり方で、今は使われていませんでした。シャツカーの結論は、本当の秘密は時間だということです。日本の牛は仕上がるまで約30カ月かかり、米国のフィードロットの肥育期間よりずっと長いのです。[Schatzker]
神戸ビーフと和牛は同じもの。
神戸ビーフは、兵庫のルールで定義された一つの銘柄で、但馬牛から生まれます。2005年の但馬牛は黒毛和種全体の約2.3%でした。2021年版ハンドブックには377の銘柄が載っています。[Enoki 2008] [Handbook 2021]
A5はいちばんおいしい牛肉という意味。
「国産牛」と表示された肉は和牛。
この表示は、たいていホルスタインか、ホルスタイン×黒毛和種の交雑種です。[Yamamoto 2017]
銘柄ごとの味は、その土地の風土から生まれる。
シャツカーが訪ねた松阪の農家は、オーストラリア産の穀物と米国産の小麦を使っていました。松阪市の職員は、共通して変わらないのは地元の水だけだと彼に話しています。歴史的に見ても、松阪・近江・神戸の牛は但馬生まれで、飛騨牛は但馬の種雄牛で躍進しました。銘柄とは、血統と肥育地とルールの組み合わせです。[Schatzker] [Enoki 2008]
和牛はもともと肉牛だった。
和牛は田を耕し荷を運ぶ役牛でした。黒毛和種は役肉兼用の牛だったのです。肉専用の牛に変わったのは、1950年代後半から1960年代の農業の機械化の後です。[Enoki 2008] [Handbook 2021] [Schatzker]
風味は霜降りに宿る。
シャツカーは英国の食肉研究を引いて、風味は牛が食べたもの、とくに草に左右され、霜降りがもたらすのは主に多汁性とコクだと述べています。この見方に立つと、和牛の特徴はむしろ脂のやわらかさです。黒毛和種はステアリン酸をオレイン酸に変える働きがとりわけ強く、その脂は手の温度で溶けます。[Schatzker]
「熟成肉」とは、長く置いた肉のこと。
日本には熟成肉の法的な基準がなく、JAS規格化も見送られました。山本は「熟成肉」という言葉をドライエイジングに限って使っています。日本には風をあまり当てない独自の「吊るし・枯らし」もあり、山本はこれが霜降りで水分の少ない和牛に向くと見ています。[Yamamoto 2017]
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